田畑が広がるのどかな風景。すこやか通りという地元で名付けられた道から入った集落の中、荘厳とした雰囲気を纏う長神社のそばに店舗がある。綺麗に整備された駐車場。通りに面したお店ならば普通に思えるが、奥まった場所にあるにしては、やや大きな店構えに感じる。
暖簾をくぐり暗がりを通ると店内に辿り着く。京都の小料理屋などのように店内までの演出が巧みで上手。ワクワクさせる。高い天井。暗過ぎず、明る過ぎず、落ち着いた照明。ゆったりと配置された客席。洒落た薪ストーブの中で揺れる炎。和モダンの空気は、忙しい日常から一時遮断された気がする。ぼんやりと蕎麦を待つ時間が辛くはない雰囲気。
十割蕎麦。笊に盛られ蕎麦はキラキラ輝いて見える。照明せいか。均一に切り揃えられた美しい蕎麦。蕎麦だけで食べてみる。瑞々しい。非常にエッジのきいた角。新鮮で感動的ですらある食感。滑らかで艶やかな蕎麦は身切れする気配が無く、これが本当に十割なのかと思わず疑ってしまうほど。店主の技術の賜物だろう。
辛汁は鰹節をきかせた返しの強いのもの。すっきりとした味わい。蕎麦との相性は抜群。そば湯はドロドロ。そば粉を溶いたもの。これは個人的には感心しない。そば湯は飲みたいがそば粉は飲みたくない。そば湯はその昔見習いの腹の足しにするために飲まれた、という話がありそれを御雛湯(おしなゆ)というそう。そういう目的ならドロドロしたそば湯は理解もできるが。
そば処 藤村
滋賀県東近江市長町116
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