都心から約4時間。四方を山に囲まれた会津若松に“高遠そば(たかとうそば)”という、辛味大根のおろし汁だけで食す蕎麦があると聞き、あるそば屋に辿り着いた。全国各地で蕎麦を食べるが、個性のある蕎麦に惹かれる。余談だが、蕎麦好きが多そうなこの地域において、蕎麦の口コミや情報が少なかったのは意外です。
天井が高く、和風モダンなインテリアの佇まいで懐深い店内。静けさの漂う店内に初夏の日射しが差し込み、心地よい時が流れる。この店では自家栽培したそば(会津のかおり)を乾燥、袋詰め、低温倉庫保管し、その玄そばを石抜き、磨き、粒揃えし、石臼製粉機でゆっくり粗く製粉。こうして出来たそば粉をつなぎ等一切使わずお湯と水のみで練り上げ、伸し、切りあげ出しているそう。
高遠そば。噂どおり辛味大根のおろしただけの汁が目前に。これに蕎麦をつけ辛味以外の味がするだろうか。初の高遠そばを恐る恐るつまみ一口すする。辛味は利いているが予想外に美味しい。爽やかな清涼感と共に、おろしの甘味が蕎麦の風味を引き立たせ、初めて味わう美味しさに脱帽。お好みで生醤油(舐めるとかなり甘辛濃い)を加えると不思議とつゆの味に近くなる。これからの季節暑い日にぴったりだと思った。
※高遠そば(たかとうそば)とは。会津松平家の初代藩主保科正之はとても蕎麦好きだったと伝えられている。保科公は約20年信濃国高遠藩との密接な関わりがあり、この地域では辛味大根、焼みそ、葱の「からつゆ」にて蕎麦が食されていた。その後、保科正之公が陸奥国会津藩23万石と大身の大名に引き立てられた事がきっかけで、この「からつゆ」蕎麦の食べ方も会津地方に伝わり発祥地の名を取って「高遠そば」と呼ばれるようになったが、その名が逆に会津から高遠地区(長野県伊那市)に伝わり「からつゆ」蕎麦を「高遠そば」とも呼ぶようになった。ちなみに、出汁の効いた醤油味のつゆは「あまつゆ」とも呼ぶ。現在高遠そばは、福島県の南会津郡下郷町の大内宿の名物として有名である。当地では箸が用意されず、付け合せの長ネギを用いて食す事が特徴である。
そば処 和田
福島県会津若松市和田2丁目2-9
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